sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「Adore」 Smashing Pumpkins(1998)

スマッシング・パンプキンズ(以下スマパン)が成り立つ要件は次のうちどれだろう:(1)実質ビリー・コーガンスマパンじゃないの?(2)ビリーとジミー・チェンバレンさえいればスマパン名乗っていいよ(3)いやどうしてもダーシーとジェームズ・イハは必要でしょ。

現在のスマパンは(1)の状態なんだが最近作「Oceania」や今後のバンドの活動予定よりも過去の作品のリイシューのほうが話題になっているところを見るとやっぱり多くの人にとってスマパンとは(3)なんだろう。特にジェームズ・イハは「イハ君」といわれ日本の女子に妙な人気があったからな。同時代のアメリカのオルタナティヴ系バンドの中ではメンバーのキャラが立っていたのが日本でスマパンが人気があった要因だと思う。正直言って現在は「ビリーとその他若者」状態なんだがこれから若者たちのキャラが立ってくるんだろうか。

Adore

Adore

この4th「Adore」は一般的に彼らの代表作と言われる2nd「Siamese Dream」および3rd「Mellon Collie and the Infinite Sadness」のダイナミックな爆音ギターロックとは打って変わって打ち込みを多用した極めて内省的で静的なアルバムである。これはジミーがドラッグ問題でバンドを離れてしまったのと、ビリーの母親の死の影響が大きいと言われているが、それがなくても一度「メロンコリー」で頂点を極めてしまった後の展開を考えるときに、前作とは全く違うタイプの音楽にチャレンジするというのはアーティストとして自然なことだったのではないだろうか。しかし作風の急激な変化にファンの間では賛否両論でセールス的にも前作から大きくダウンしてしまった。およそ「スマパンらしくない」のが原因じゃないかと思うが、そういった先入観なしに聴けば「Adore」は充分にレベルの高い作品である。ビリーのヴォーカルもいつものカエル声よりもクリーンなパートが多く美しい。もう1つこのアルバムに特徴的なのは80年代UKニューウェイヴの影響が随所に見られることだ。デペッシュ・モードやキュアー、さらにペットショップボーイズみたいな曲もある。80年代をリアルで経験している者にとっては(前回と同じことを言ってるな)いちいちツボなフレーズが多い。80年代的と言えばこの時期のスマパンはPVもバンド写真もまんまゴスである。多分当時のビリーの彼女であったフォトグラファーYelena Yemchukの影響(実際Yelenaは「Adore」のアートワークにも全面協力している)だと思うが、白黒を基調とした耽美で幻想的な作風は日本人好みと言えるんじゃないだろうか。しかし最初からこんなゴスの格好でデビューしてたらただのキワ物バンドだっただろうな。