sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「Modern Life Is Rubbish」 Blur(1993)

ブラーと言うと今ではオアシスと並ぶ「ブリットポップの立役者」的な言われ方をされていることが多いと思うが、デビュー当時は「遅れてきたマンチェ」みたいな扱われ方をされていた。おまけになまじメンバーのルックスがいいせいで余計うるさ型のUKロックファンからバカにされていたような気がする。デビューアルバム「Leisure」は「マンチェ+シューゲイザー」みたいな感じの作品だが「マンチェ」も「シューゲイザー」もヴォーカルがいかにもやる気がないというか「一生懸命とかダサい」みたいな態度が共通するためかここで聴かれるデーモンのヴォーカルもこれといって個性を感じない(むしろグレアムのギターについつい注目したくなる)。余談だがこの時期ブラーとマニックスは当時日本の洋楽誌(というかロッキングオンなんだけど)でお互いの悪口をかなり激しい調子で言い合っていたので何となくわたしの周りのマニックスファンの間でブラーを好きになってはいけないみたいな雰囲気ができていた(逆にブラーファンがマニックスを敵視していたかどうかは不明)。後にニッキーがブラーの「13」をお気に入りに挙げるなどデビュー時とは随分態度が変化してしまっているがマニックスの前言撤回などもはやお約束であろう。

Modern Life Is Rubbish

Modern Life Is Rubbish

 

 ブラーの代表作というとブリットポップ全盛期の3rd「Parklife」が真っ先に上がると思うが彼らがいわゆる「ブリットポップ」というスタイルを提示したのはこの2nd「Modern Life Is Rubbish」からである。「Leisure」の後にリリースされたシングル「Popscene」を初めて聴いたときその音楽性の劇的な変貌ぶりに驚愕したものである。「このバンドは結構イケるんじゃないか」と思ったのだが全英チャート的には最高32位と決して芳しくない。このシングルがリリースされた1992年という年はいわゆるマンチェ(マッドチェスター)・ブームが終息しニルヴァーナパール・ジャムに代表されるグランジ/USオルタナティヴ・バンドのブームがイギリスでも猛威を振っていた時期で、NMEやメロディー・メイカーなどの英国を代表する音楽誌もしょっちゅうカート・コバーンを表紙にしていた記憶がある。この時期のデーモンのインタビューはグランジブームに対する愚痴みたいなのが多かったし、「Modern~」がグランジに対抗するように極めてトラディッショナルな英国ポップのスタイルを踏襲しているのもごく自然な流れといえる。当時の音楽トレンドに対する鬱屈した気分が反映されているのか「Modern~」はこの次の「Parklife」に比べると内向的で地味で暗い。しかしメロディーは非常に明快で聴きやすく、何と言っても自分たちの音楽を確立しつつあるという自信と「攻め」の姿勢が伝わってくるのが気持ちがよい。裏雑記にも書いたとおり本作はブラー作品の中でも特に個人的お気に入りであり他の人にも「ブリットポップの名盤」として自信を持って薦められる盤である。