sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「Nobody Else」Take That(1995)

今ワン・ダイレクションというイギリスのボーイズグループが大人気らしい。洋楽人気が低迷しきっている現在の日本でCMにも出演するぐらいなのだから若い世代にはそれなりに人気なのだろう。日本だともう何十年も前からジャニーズ出身のアイドルグループ達が活躍しているが、イギリスでボーイズグループの走りというとワム!あたりになるんだろうか。「ビートルズだってベイ・シティー・ローラーズだってアイドルだったよ」と言われれば否定はできないが、彼らはアイドルである前に「バンド」であるし、ボーイズグループの定義が「楽器を持たずに歌って踊る健康的でルックスの良い男性グループ」というとやはり直接的にはワム!からになるんじゃないだろうか。「アンドリューはギター持ってたじゃん」という意見もあるだろうがあれは限りなくエアギターというか何ちゃってっぽいしな。
 ボーイズグループとして成功するポイントはルックスや歌唱力以上に「メンバーのキャラが立っている」ことだと思う。ジャニーズのグループなどは昔から意図的にメンバーのキャラ付けをされてるように見えたし、SMAPがあれだけ長続きしているのは各メンバーの個性とグループとしての調和のバランスが絶妙だからなんだろう。もっともスパイス・ガールズの例を考えると「キャラが重要」というところは実は男性も女性も変わらない気もしないでもない。
テイク・ザットは90年代に絶大な人気を博し現在でもイギリス本国において根強い人気を誇るマンチェスター出身のボーイズグループである。テイク・ザットの最大の強みは「曲を書けるメンバーがいる」ことで、この点が有象無象の「作られたアイドル」と一線を画すところだろうと思う。この「曲を書けるメンバー」のゲイリー・バーロウはリードヴォーカル担当でもあった。これだけの情報だと何だか「ゲイリーとその他」みたいなイメージだがそれだけではなく後に稀代のエンターテイナーとして英国音楽シーンに君臨することになるロビー・ウィリアムズの個性も当時から際立っていた。まあ何だかんだでゲイリー以外のメンバーの方がルックスが良い(笑)のでグループとしてのバランスが保たれてたんだろう。
Nobody Else

Nobody Else

 

 この「Nobody Else」はテイク・ザットの3rdアルバムである。前2作がボーイズグループらしい躍動感あふれるアップテンポの曲が多かったのと対照的に本作はブラック・コンテンポラリー色を前面に押し出した非常に洗練された、大人の雰囲気のアルバムである。最初このアルバムを聴いたときに「あーやっちゃったな」という印象を持った。個人的には一番好きなテイク・ザットのアルバムであるし愛着はあるのだが、ちょうどスタイル・カウンシルが「The Cost of Loving」でやらかしたように、R&Bという特定の音楽の様式を追求するあまりその既存の様式の枠内にすっぽりハマってしまったように思われたからである。「Back For Good」の大ヒットは、この曲だけがアルバム全体を支配する「類型的R&B」の形式から逃れているからなんだろう。白人R&B系アーティストがR&Bの様式を追求しすぎて失速するパターンは上述のスタカンに限らずホール&オーツの「Ooh Yeah!」やリック・アストリーの「Free」等枚挙にいとまがないが、このテイク・ザットの「Nobody Else」も、リリース後間もなくロビー・ウィリアムズの脱退を引き起こしグループ自体も解散(注:現在は再結成して活動中)ということを考えるとやはり手放しでは絶賛できない作品なのではないだろうか。余談だがこの「Nobody Else」のアルバムジャケットのメンバー写真は5人バージョン(UKオリジナル盤)のと脱退したロビーの写真が消された4人バージョン(US盤)が存在する。しかしいくら脱退したからってジャケット写真から抹殺することないよなあ。ロビーが怒って当然だ。