sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「Heaven Up Here」Echo And The Bunnymen(1981)

エコー&ザ・バニーメンはそれまでメタルやらチャート音楽やら手広く聴いていたわたしが中学2年の秋から本格的に英国ニューウェイヴにハマっていたころによく聴いていたバンドの1つである。というか英国NWにハマるきっかけがエコバニ(とU2)だったと言ったほうがより正確だ。最初はどちらかというとU2のほうが好きだったのだが、4th「The Unforgettable Fire」以降の作風にどうしてもなじめず、逆にエコバニのアルバム未収録シングル「Never Stop(Discotheque)」と「Do It Clean」のライブバージョンに衝撃を受けて以降、あっさりとエコバニ派に転んでしまったものである。エコバニを語る上で欠かせないのはイアン・マッカロクの朗々と歌われる低音ヴォーカルとウィル・サージェントの冷気溢れる鋭角ギターである。逆に言えばこの2つさえあれば他はどうでもいいんじゃないかという気すらする。現在エコバニがマックとウィルの2人で活動しているのも至極自然な流れなんだろう。このエコバニジュリアン・コープ(ティアドロップ・エクスプローズ)を中心とするリヴァプール・ネオサイケと言われるバンドにはずいぶんハマったので、わたしにとってのリヴァプールビートルズよりもこの辺のバンドのイメージのほうが強い。それまで洋楽アルバムは誕生日に親に買ってもらったものか、FM番組をエアチェックしたものか、レンタルCD屋で借りたものをダビングしたもののどれかだったのだが、大学に入って自分のお小遣いで買った初めてのCDがエコバニの1st~4thだった(←大学生協のCDコーナーに置いてあった。今から思うと何であんなマイナー理系私大の生協に置いてあったのかが謎だ)。マックはつい先日(と言ってももう4年前か)マニックスの「Some Kind of Nothingness」(「Postcards from a Young Man」収録)でジェームズとのデュエットを披露したが、マニックスにとってもエコバニは学生時代のフェイバリットであったらしく、リッチーなどはマックの髪型まで一生懸命真似していたものである。ちなみにあのマックの髪型を日本人がやろうとする場合髪質的に一度根元からパーマをかけないとダメなものらしい。童顔でアイドル人気もあったマックだが、そのルックスに合わない(?)暗くてエキセントリックなヴォーカルは一度ハマるとくせになる。U2のボノとかキュアーのロバート・スミスの甘めで少年っぽい系のヴォーカルのほうがそりゃメジャーにアピールするだろうけども。

Heaven Up Here

Heaven Up Here

 

この「Heaven Up Here」はエコバニの2ndアルバムで確か1981年度のNME人気投票でベスト・アルバムに選ばれたんだったと思う。一般的にはその次の「Porcupine」や「Ocean Rain」のほうがメジャーなんだろうと思うが 、個人的にはこの2ndが一番ダークで内省的ゆえに好みである(どうも自分はジュリアン・コープなら「Fried」、スマパンなら「Adore」など暗い作風のが好きらしい)。このアルバムで描かれている音世界は、そのままアルバムジャケットの薄暗い曇り空の荒涼とした風景と一致する。およそこのアルバムほどジャケットと中身のイメージが一致する作品というのもそうそうないんじゃないだろうか(あとはマイブラの「Loveless」ぐらいか)。わたしは日頃ほとんど歌詞を読まないので実際の歌のテーマを知らない(本人たちも「日本盤の歌詞カードは間違いだらけ」とか言っていた)のだが、マックの低音ヴォーカルとピート・デ・フレイタスのズンドコ・ドラムはどこか大自然に対する畏怖とか呪術的な空気すら感じさせる。そしてやはりこの空気感はリヴァプールというイングランド北部の一地方都市のバンドならではであり、ロンドン(ないしその近郊)出身のバンドでは絶対鳴らすことのできない音世界だと思う。以前リヴァプールに行ったときにちょうどこのアルバムと同じような曇り空で感動したものだ。後の作品群に比べて荒削りな部分は否めないが、それゆえ音楽的に急速に充実していく過程の勢いに圧倒される。