sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

【この1曲】Killswitch Engage「Holy Diver」(「As Daylight Dies:Special Edition」(2007))

今やロックの歴史も半世紀以上となり同姓同名のミュージシャンも当然増えている。私が若い頃はロジャー・テイラーという名前のドラマーがクイーンとデュラン・デュランにいてどちらも人気だった。「カタカナで書くと同じ名前のバンド」の場合と同様、こういう同姓同名ミュージシャンたちはお互い音楽性が遠ければ遠いほどインパクトが強くてネタになる。多分これ以上の対照的な例もそうそうないと思われるのが「ハワード・ジョーンズ」であろう。歳がばれるが私にとってハワード・ジョーンズというのは80年代ポップス界を風靡したイギリス出身のシンセポップアーティストである。通称「ハワジョン」で親しまれていた彼は色白でスリムでどこか気の弱いところのありそうな、元祖「草食系男子」(←実際彼は菜食主義であった)と言った風情の、ブロンドの髪をツンツンに立てた独特の髪形が人気の青年であった。ポップでありながらどこか哀愁漂う曲も日本人好みでファンも多かったと思う。そんなわけで米国のメタルコアバンドKillswitch Engageの下の動画で朗々と野太い声で歌っているスキンヘッドの強面のゴツい大男の名前がハワード・ジョーンズと聞いて「えぇ~そりゃないよ」と思ったものである。だっていかにも肉食って感じじゃんこの人。下のPVでも王様の格好してるのが思いっきり肉食ってるし(←それ別のメンバーだから)。ルックスも出身も違えばやってる音楽も全然違うし、この組み合わせで両方CD持ってますっていう人はさすがにいないんじゃないかな(←余裕で持っているよという人はこちらに連絡を)。


Killswitch Engage - Holy Diver [OFFICIAL VIDEO ...

「Holy Diver」というのはカヴァー曲でオリジナルはあのロニー・ジェイムス・ディオ率いるバンドDioの曲である。ロニーの超人的なヴォーカルが強烈な存在感を放っている曲だから、おいそれとカヴァーするのもためらわれそうなものだがここで聴かれるハワードの骨太でパワフルなヴォーカルはロニーファンが暗黙のうちに要求するレベルを余裕でクリアしていると思う。メタルコアというと随分前にここで取り上げたブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインもそのカテゴリーで語られることが多く確かに演奏スタイルは両者よく似ているのだが、決定的に違うのがやはり「メタルコア」の枠を自然に逸脱してしまうハワードの規格外のスケールのヴォーカルなんだと思う。PVの出来も非常によい。何と言っても今時お城と王様と騎士と姫と魔法使いが出てくる中世コスプレ劇である。中世マニアであったロニーへのオマージュであることは間違いないが近年これだけエンターテイメント性のあるPVを堂々と作ってしまう勇気(←こういう大掛かりな作りはしばし80年代的とバカにされがちだから)は非常に好感が持てる。最近のバンドのPVってただ演奏しているだけのが多いからつまんないんだよね。
ちなみにこのハワードは数年前にKillswitch Engageを離れており、現在はハワードの前にこのバンドに在籍していたジェシー・リーチが復帰しているのらしい。あれ~、何か前回のダンとアッシュみたいだぞ?TesseracTもそうだけどいくら先代ヴォーカリストといえ後任がなまじ高い評価を得てると色々とやり辛いところもあるんじゃないかね。口の悪い人なら「わざわざ戻ってくるぐらいなら最初からバンド抜けるなよ」と思うだろうし。例によってファンの間では各所でジェシー派とハワード派が激しく対立しており「Jesse vs Howard」なる動画まで何本も作られている始末。本人たちは「下らない論争はやめろ」とクギを刺しているようなのだがKsEに限らずロックバンドのファンというのは自分の贔屓のメンバーのほうが上であってほしいものなんだろう。
しかしここの「万年メタル初心者が超いい加減にメタルバンドを語るシリーズ」、そろそろ各方面のメタルファンから刺されそうだな。