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sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「Nowhere」Ride(1990)

個人的には90年代英国モノは94~96年あたりのブリットポップよりもその前の、マッドチェスターやシューゲイザー全盛期の89年~91年あたりのほうが思い入れがある。この時期はその他にもハウスやアシッド・ジャズ、グラウンド・ビート等クラブ系の音楽も充実していて、当時学生だった私は毎日のように輸入CD店に立ち寄っては面白そうなアーティストを物色したものである。あの頃は日本の洋楽誌もこれら英国新世代音楽シーンをきちんとフォローしていてまだフルアルバムを1枚も出してないような駆け出しのペーペーみたいなバンドたちにも熱心に取材をしてくれていたし、1stフルアルバムが出る前に本国でリリースされた数枚のEPをまとめて日本編集盤という形でリリースもされていた。今から思えば夢のような話である。
英国オックスフォード出身であるライドはラッシュ(Lushのほう)、チャプターハウス、スローダイヴと並ぶ90年代シューゲイザーの代表格といえるバンドである(その元祖がジーザズ&メリー・チェインとマイ・ブラッディ・ヴァレンタインであることは裏雑記で触れた)。これらのバンドに共通する甘くノスタルジックなメロディーと音の洪水のようなラウドでノイジーなギターにナイーヴでか細いヴォーカルという組み合わせがもたらす、ドリーミーでどこか非現実的な浮遊感はとても魅力的だった。他のジャンルのミュージシャンへの影響力も強く、後に独自の音楽性を確立するブラーやスマッシング・パンプキンズもその初期はシューゲイザーの影響丸出しだった。このブームはその後のグランジブリットポップの台頭によりいったん下火になったが現在は「ニューゲイザー」なるシューゲイザー新世代バンドが続々登場している。意地悪な言い方をすればプログレやメタル等他のジャンルに比べて特に卓越した演奏能力がなくてもエフェクターをバリバリ効かせればそれなりにカッコよく聴かせることができるのでバンドを組む側としてはとっつきやすいんだろう。

Nowhere

Nowhere

 

 「Nowhere」はライドの1stアルバムである。実はこのアルバムが出るずっと前から「Ride EP」「Play EP」「Fall EP」という3枚のEPが各音楽誌で絶賛され既に多数のファンを獲得していた。この3枚目の「Fall EP」の4曲は全て「Nowhere」に収録されているのでいわば「Nowhere」の先行シングルみたいな位置づけのEPと考えていいと思う。最初の2枚(「Ride EP」「Play EP」)は爽快感あふれるストレートなギターポップという風情だったのが「Fall EP」でよりサイケデリックで複雑な世界観を醸し出すようになり、それが全面的にフィーチュアされたのが「Nowhere」である。冒頭の「Seagull」からサイケデリックでノイジーな轟音ギターが渦巻く長い長いイントロに圧倒される。この曲に限らず6分前後の収録曲が多いが、基本的にどの収録曲も似たような世界観で統一されているのでまるでアルバム1枚まるまる1曲みたいな印象を受ける。およそ「シューゲイザー」と聞いてイメージするものの全てがこのアルバムに凝縮されていると言っていいと思うし、「シューゲイザーを聴くための最初の1枚」としてはあのマイブラの「Loveless」より薦められると思う。
ただし一回聴けば明らかだがこのアルバムはビートルズの影響がとても強い。特に「Seagull」のベースラインはまんま「Taxman」のパクリといっていいと思う。実際初来日のアンコールでも「Tomorrow Never Knows」を披露したぐらいだからフツーにファンなんじゃないだろうか。ビートルズが嫌いだとちょっと受け付けないところもあるアルバムかもしれない。