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sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「We Are Harlot」We Are Harlot(2015)

先日、NHK-FMで「今日は一日ハードロック/ヘヴィメタル三昧」という番組をやっていて、元々メタルは門外漢で日頃聴いているメタルというとプログレメタルとかメタルコアのようないわゆるメタルの主流から外れているようなものばかり聴いている私としては、「たまには今時のメタルのトレンドがどんなものか情報収集してみるか」と聴いてみたのだがそのラインナップがデフ・レパードだのアイアン・メイデンだのモトリー・クルーだのボン・ジョヴィだのヴァン・ヘイレンだのといった80年代メタルのビッグネームばかりで「一体今は西暦何年なんだ?」と思ってしまった。だって80年代と言うと実感がわかないかもだけど要するに「昭和時代」だよ?プレイリストの約半分を占めるのが昭和時代の曲というのはいくらなんでも後ろ向きすぎないだろうか。この「メタル三昧」の番組のターゲット層は(表向きリクエスト制を採用しているとはいえ)コテコテのメタラーではなくおそらくもっとライトな、「メタルに興味はあるけど…」というような人たちを想定していると思うしそういった層にもメタルの楽しさ・面白さが伝わるバンドを紹介したいという趣旨には共感できるものの、その代表例として取り上げられるバンドが80年代組ばかりというのは、逆に考えると「誰にとっても魅力的な曲」を現在の若手バンドが提供できてないか、そういうバンドは本当は存在するのに肝心の雑誌や音楽ライターがそれに気付いてないかのどちらかなんだと思う。いやBABYMETALを頑として自分の番組や雑誌で取り上げないところを見るとそういった存在に気付いていながら自分の立ち位置を脅かす存在として彼らを認めたくないだけなのかもしれないけど。こうなるとただの「老害」以外の何物でもない。

We Are Harlotは元Asking Alexandria(以下アスキン)のダニー・ワースノップ(Vo)とセバスチャン・バックのバンドにいたジェフ・ジョージ(g)が中心になって結成されたバンドである。ダニーは1990年生まれなので当然80年代はリアルタイムではない。従って彼の80年代ロック好きというのは「自分が経験したことのない時代」への純粋な憧れなんだろうと思う。アスキンは基本的にメタルコアのバンドなのだが、We Are Harlotはそんな彼の前歴を殆ど感じさせないド直球型80年代ハードロックである。これは全くの主観だがそもそもDanny Worsnopという名前自体が全然メタルコアっぽくない気がする。「どういうのがメタルコアっぽい名前なんだよ」と言われると答えに困るが、例えば他のメタルコアのバンドのBMTHとかBFMVの連中はもうちょっと短い名前の人が多いし(アスキンの現ヴォーカルも本名のDenis ShaforostovからDenis Stoffと短くしてるしな)それに比べるとWorsnopという苗字には往年のブリティッシュ・ハードロックのバンドにいそうな何だかクラシカルな格調高い雰囲気すら漂っている。その割にWe Are Harlotは今ひとつブリティッシュ臭がしないなと思ってバンドのプロフィールを見たら何とLAを拠点にしているアメリカのバンドだった。同じ80年代でもその影響元がNWOBHMであり、かつ引用がメタルコアの範疇にとどまるBFMVとは全く影響元もアプローチも異なっている。

We Are Harlot

We Are Harlot

 

そのWe Are Harlotのデビューアルバムがこのセルフタイトルの「We Are Harlot」である。とにかく80年代を通過している人間にとっては感涙モノの懐かしさに溢れたアルバムだ。一聴して真っ先に思い起こされるのはエアロスミスだが、その他にもデフ・レパードやガンズ&ローゼズやスキッド・ロウ等80年代ハードロックのバンド達の面影を感じさせる。しかし単なる懐古趣味ではなくアレンジや音処理にメタルコアを通過している世代ならではの現代的解釈が入っていて、そこが聴いていて古臭く感じさせないところなんだと思う。何と言っても80年代バンドの単なるコピーやパクリではなくこれらのバンド特有の語法やエッセンスをよく咀嚼し自分達の音楽の中に昇華しているところが見事である。また非常に明快かつキャッチーで魅力的なメロディーを持つ曲ばかりなので、80年代をリアルで経験していない若い世代にも楽曲の魅力は充分に伝わると思う。とにかく呆れるほどダニーの歌が上手い。技巧的なことはよくわからんが今時のヴォーカルに珍しい「歌心」のようなものが伝わってくるような気がする。80年代からちょっと時代は下るがブラック・クロウズ初来日時のクリス・ロビンソンのブルージーでソウルフルな生歌に鳥肌が立つほどの感動を覚えたことがあるがそういう類の上手さである。アスキン時代に喉を潰して濁声に変わって従来のメタルコア唱法ができなくなってしまったのをWe Are Harlotではうまく逆手にとってアメリカン・ハードロックならではのいい意味での泥臭さを出すことに成功している。今後このバンドがどのような方向に進むのか未知数だが、このアルバムで見事に再現されている、90年初頭のグランジ登場以降に失ってしまった往年のハードロックの明るさや大らかさ、楽観的な空気は今の時代にこそ求められているものかもしれない。We Are Harlotは先日のベテランバンド偏重の「メタル三昧」でも取り上げてもらった数少ない若手バンドだったけれども、多くの人にハードロックやメタルの魅力を伝えられる現代のバンドとして今後も引き続きプッシュしてもらいたいと思っている。
でもさ、やっぱりこの系の曲をやるんだったらダニーはもうちょっと痩せたほうがいいと思うんだよ。いくら「デブいヒゲのオッサンはアンタの大好物じゃん」と言われても物には限度というのがあるぞ。アクセル・ローズみたいなのを狙ってるのかもしれんがアクセルだって最初からデブかったわけじゃないからな?