sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「4」Foreigner(1981)

これまでの自分の無駄に長いだけの音楽遍歴を振り返ってみると、どうやらプログレあるいはハードロックのいずれかの要素を含むバンドに特に惹かれる傾向があるようで、そのルーツとなっているのは私が洋楽にハマる決定的なきっかけとなったアメリカン・プログレ・ハードである。代表的なバンドとしてジャーニー、スティクス、ボストン、TOTO等が挙げられるが、彼らに共通する明るくキャッチーなメロディーと高度な演奏力に支えられた安定したクオリティの楽曲群から日本の某音楽評論家などは「産業ロック」と揶揄したほどであるが、実際これらのバンドの曲が一時期全米チャートを席巻していた時期があったので半分やっかみも入っていたんだろう。

フォリナーという米英混合バンドもそのプログレ・ハードと呼ばれたバンドの1つで、前回の記事では「現在ではイケてると思われていない」というようなことを書いてしまったのだが、実は彼らの全盛期であった80年代前半も日本の洋楽誌では「フォリナー的」という形容はどちらかというと否定的な文脈で使われることが多かったように記憶している。しかし今にして思えば彼らは洋楽の入り口としては最適な、適度にハードで耳に残りやすいメロディーという解りやすい魅力を持ったバンドで、現在このような位置づけのバンドはちょっと見当たらないのではないだろうか。バンドの半数が英国人メンバーであるせいかジャーニー等と比べどこかメロディーにウェットな哀愁が感じられるのも日本人好みだと思う。ちなみにフォリナーの初期のメンバーであるイアン・マクドナルドは何とキング・クリムゾンに在籍したことがありしかも例の「宮殿」のレコーディングメンバーですらあるのだが個人的にフォリナープログレ要素を感じたことは殆どない。TOTOの初期などは邦題も「宇宙の騎士」だし派手で壮大な盛り上がりをみせる曲が多くてプログレ的ということもできるのだがフォリナーは最初からコンパクトにまとまったハード寄りのメインストリーム・ロックという感じで、彼らがプログレ・ハードといわれるのはぶっちゃけ元キング・クリムゾンのメンバーがいたから(笑)ってだけじゃないかという気もしないでもない。 

4

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「4」はフォリナーの4枚目のアルバムで、当時のビルボード・アルバムチャートで10週連続1位という記録を持つモンスターアルバムである。アルバム名は4枚目ということと、元々6人組だったのがこのアルバムから4人編成になったところから来ている。「4」と大きく描かれたアルバムジャケットもシンプルながらインパクトがあり当時英語のタイトルなど全く無知な小学生だった私にとっても非常に解りやすいものであった。デフ・レパードの代表作「High 'n' Dry」「Pyromania」「Hysteria」を手掛けたことで有名なジョン・マット・ランジによるプロデュースのためか、前作からさらにハードロック寄りの作風に仕上がっている。特に「Night Life」「Juke Box Hero」「Urgent」などを今聴くと「何だこのデフ・レパードみたいなの」と思ってしまう人もいるのではないだろうか。しかし「4」を有名にしているのはこれらハードロック路線の曲群より何と言ってもメランコリックで美しいバラード「Waiting for a Girl Like You」(邦題「ガール・ライク・ユー」)である。ビルボードチャート10週間連続2位という珍しい記録を持ち、当時まだ無名だったトーマス・ドルビーによる冷気を帯びた月光のようなシンセサイザーがとりわけ印象的な曲である。この次のアルバム「Agent Provocateur」からのシングルでフォリナー最大のヒット曲である「I Want to Know What Love Is」もまた聖歌隊がフィーチュアされた壮大なバラードで、結局この2曲が現在のフォリナーに対するイメージを決定づけているように思われるのだが、後追いでフォリナーを知った若い世代の人には是非この「4」を通しで聴いてもらいたいと思う。ハードロックありバラードありノリの良いロックンロールありの非常にバランスのとれた粒揃いの楽曲の揃った名盤だ。