sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

【この1曲】華原朋美「I'm Proud」(「LOVE BRACE」(1996) )

以前、Catherine Anne Davies(The Anchoress)の記事で「著名な男性ミュージシャンがプロデュースした女性アーティスト」というイメージが定着することへの危機感について触れたが、逆に「プロデュースされた女」を自ら全面的にアピールしたのがこの「朋ちゃん」こと華原朋美と言っていいだろう。何しろJ-POP全盛期の90年代中盤にtrfやglobe、安室奈美恵ら多数のアーティストの曲を次々とヒットさせ当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった小室哲哉の「彼女」という触れ込みでデビューしたぐらいである。当時彼らを見て「公私混同もたいがいにしろ」「16も年下の女の子と付き合うとかどんだけよ」と思ったものだけれど、朋ちゃんの「有名プロデューサーに才能を見出されて恋愛関係になり彼のプロデュースであっという間にミリオンセラーを連発する人気歌手に」というシンデレラストーリーは若い女性達の憧れであったらしい。しかし彼らの恋愛関係も長くは続かず99年には破局が報道され、その後の華原朋美の波乱に満ちたエピソードの数々はみなも知るとおりである。今から思えばそもそもラブラブとされていた全盛期でさえ2人で一緒にTV出演した時に「小室さん小室さん」と舌足らずな声でべったりと甘える朋ちゃんに対し声もボソボソと小さくどこか心ここにあらずな小室哲哉に違和感を覚えたものだ。まさか最初から「恋人」はただの演出で小室哲哉朋ちゃんに恋愛感情がなかったわけではないと思うが、彼女について「倍音を沢山含んだ豊かな響きを持つ声。滅多にいない声で、その声で生まれて良かったと思って欲しい」と絶賛する通り、純粋な恋愛感情というよりは華原朋美の「声」が持つ天性の資質と個性に夢中になっていたのではないだろうか。もちろん男性ミュージシャンにありがちな「自分のイメージ通りに女性をプロデュースしたい」みたいな欲求もあったとは思うけれども、それ以上に作曲のインスピレーションを得る源泉として彼女(の声)を重宝していたのだろうと思う。何より出会った当初は女優志望だった「遠峯ありさ」をその声が持つ可能性を見出し「歌手・華原朋美」として世に出したのは小室哲哉の数ある功績の中でも最大のものであろう。小室との破局のトラウマをいまだに克服できないのか朋ちゃんは最近のテレビ出演でも「私が華原朋美じゃなかったら(よかったのに)」と涙を流しつつ過去の自分を全否定していたそうだけれども、もし「華原朋美」がいなかったら彼女に憧れて芸能界入りを志した深田恭子もいなかったのだし、深キョンが大好きな私としては朋ちゃんに感謝してもしきれないのである。 


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この「I’m Proud」は華原朋美の3rdシングルで彼女の最大のヒット曲である。私もずいぶんカラオケで歌ったものだ。「華原朋美」のPVなのに当たり前のように小室哲哉まで堂々と映っているのが笑えるのだが、この曲のドラマチックな華やかさ、力強さと繊細さの見事なコントラスト、ロサンゼルスの超高層ビルの屋上で撮影されたPVのスケールの壮大さ、何よりも当時公私ともに幸せいっぱいの華原朋美の全身から放たれるキラキラオーラは何度見ても感嘆するしかない。彼女より歌唱力のある女性歌手はたくさんいるんだろうけれど、あの透明感あふれる高音と独特のビブラートは他の人が真似しようとしてもちょっとできない類のものではないだろうか。当時はこのPVを見ても「幸せいっぱいだよね」ぐらいにしか思わなかったのだけどその後の彼らの辿った道があまりにも波乱万丈なためにこのPVを見返すと「ああこの時代はよかったなあ、二人ともキラキラしているなあ」と涙すら出てきてしまう。破局から20年以上も経ち夫や子供のいる現在も何かと小室哲哉ネタを持ち出さずにいられない朋ちゃんを見て「もういい加減に過去のことは克服してくれ」と思うファンも多いだろうけれども、才能が大きすぎる人にありがちな己の才能に自分自身が押しつぶされてしまう業を彼女も背負ってしまっているのだろう。彼女を見るたびに「浪花千栄子(←「おちょやん」のモデルの人)みたく朋ちゃんも庭石に「小室哲哉」と書いて毎日それ踏んづければいいのに」「ジェリービーンを切ったマドンナみたく恋人たちをキャリアの踏み台と割り切れなかったのかな」とか思ってしまうのだけれど、当時も「小室さんがいないと私は歌えない」などと小室に喜んでもらいたい一心で歌を頑張ってただけで何が何でものし上がってやるみたいな野心とかは無縁だから周りも何とかしてあげたいと思ってしまうのだろうね。だって不安定なメンタルと不摂生からまるまる太ってしまい往年の姿は見る影のない今もいざ歌うと全盛期とほとんど変わらないんだよ。ホントもったいないじゃんね。先日10kg減らすダイエット宣言したようだけどぜひ達成して自信をつけてもらいたいものである。って絶賛増量中の私もまったく人の事言えないんだけどさ。