sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「Paul Weller」Paul Weller(1992)

 わたしにとってポール・ウェラーザ・ジャムの時代よりもスタイル・カウンシル時代のほうがなじみがあるのだが、どうもスタイル・カウンシルザ・ジャムや現在のソロ時代の作品に比べると本国での評価が低いようで残念だ。まあ実際この時代のポール・ウェラーは色々とツッコミどころのある言動も多かったのだけれど、音楽的にいえば少なくとも最初の2枚(「Cafe Bleu」「Our Favourite Shop」)はUKソウル史における傑作ではないだろうか。おそらく後期に入って類型的なR&Bの形式にまんま乗っかってしまったような楽曲が増えてしまったのが最大の叩かれポイントじゃないかと思うが、よくよく考えてみたらスタカンを始動させたばかりの頃も「ジャムをわざわざ解散させてまでやりたかった事ってそれなの?」みたいなことをNMEの記者にネチネチと突っ込まれていた記憶がある。そのジャムだって出てきたばかりのときはウェラーの保守党支持発言で散々叩いたくせに音楽誌というのは勝手なものである。スタカンを純粋に受け入れてたのってわれわれ日本人ぐらいじゃないだろうか。スタカンの最後のアルバムがレコード会社にリリースを拒否られてしまい、解散後も本国ではソロ契約が難航し1stは当初日本でしかリリースされてなかったんじゃなかったかと思う。それぐらいポール・ウェラーのソロとしてのスタートは悲惨だったのである。今から思うとちょっと信じられない状況ですな。

Paul Weller

Paul Weller

 

 このソロ第1作目は先述の通り当初は日本のレコード会社からのリリースのみであった。本国における当時のポール・ウェラーは「すでに過去の人」扱いであったし、本作に対する評価も「スタカンの延長」みたいなややネガティブなとらえ方をされていることが多いように記憶している。個人的には周りが言うほど「スタカン的」とは思えないし、歌モノとして純粋に良作だと思うのだが、後の泥臭系英国R&B路線と比べるとキャッチーで叙情的なメロディーの曲が多くてその辺に「スタカン臭」を感じ取ってしまう人もいるんだろう。しかしゲスト・ミュージシャンを見ると旧友のドクター・ロバートの他にもヤング・ディサイプルズのような当時英国R&Bシーンに多大な影響力を与えていたアシッド・ジャズのアーティストたちの名前が見られ、当時の空気を柔軟に取り入れつつも後期スタカンのようにまるまる流行の様式をパクってしまうのではなく、そうした様々なR&Bのエッセンスをしっかりと自分の音楽として昇華している。さらに「Into Tomorrow」などを聴けばソロ・アーティストとしてのウェラーのアイデンティティは間違いなくこのアルバムですでに確立されていると言っていいと思う。本作に対する今イチな印象があるとすればそれは単にNMEやロキノンの連中が好きなタイプの音楽ではないというだけであって、楽曲の質は間違いなく高いし何よりもソロとして再出発するウェラーの強い意気込みが伝わってくる良作だ。ぜひYouTubeiTunes等で試聴してほしい。