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sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

【この1曲】Anathema「Untouchable (Part 1&2)」(「Weather Systems」(2012))

今回、本来は「この2曲」なのだがワンセットで聴くべき曲だと思うのでここに取り上げるものである。リヴァプール出身のアナセマ(Anathema)というバンドのことは前々からドゥーム/ゴシック・メタルバンドとして名前だけは知っていたのだが実は先日まで彼らのことを北欧出身だと勘違いしていた(この手のジャンルのバンドは大抵北欧出身だというイメージがあったので)。それが最近になってあのポスト・プログレのレーベルであるKscopeからアルバムが出ているのを見て「これはあのアナセマなんだろうか?」と驚いたものである。Wikipediaなどを見ると1996年あたりからは既に当初のドゥームメタルのスタイルを離れ、よりプログレッシブ/オルタナティヴ・ロックな路線へアプローチしだしたようである。ついこの前まで彼らのことをメタルじゃんと思ってた自分はどんだけ浦島だったんだろうか。現在のバンド写真を見てもドゥームメタルな要素はどこにもない。かといって現在の彼らの音楽を「プログレッシブ・ロック」と言っていいのかも個人的には疑問である。どうやら最近向こうでは「叙情的で美しいメロディーが売りのバンド」はみんな「プログレ」扱いされているんじゃないだろうか。じゃあ現在のマニックスプログレでいいな(笑)。真面目な話マニックスも最新作(「Futurology」)でクラウトロックっぽいことやるらしいから当たらずとも遠からずじゃないかな。


Anathema - Untouchable (part 1 & 2) HD - YouTube

「Untouchable」は最近作「Weather Systems」の冒頭を飾る曲でPart1とPart2が続けて収録されている。本当はアルバムまるごとお勧めなんだがやはりこの冒頭2曲が傑出している。よく「心洗われる音楽」という言い方があるが、これらはまさに聴いていると心が浄化されるような曲である。Part1の前半のアコースティックギターには広々とした緑の美しい草原を駆けていくような爽快さがあり、後半はこのジャケットのような青空に向かって駆けあがっていくかのような壮大さと力強さに圧倒される。躍動感にあふれドラマチックでありながらどこか一抹の哀愁を感じるのは「Everything Must Go」「This is My Truth~」期のマニックスに通じるものがあるし、やはり英国出身ならではの音という感じだ。

Part2はストリングスとピアノをバックに朗々と歌われるヴィンセント・キャヴァナーと女性ヴォーカルのリー・ダグラスのデュエットが美しい、静謐でゆったりとした曲である。このリー・ダグラスは歌が上手いだけでなく非常に魅力的な声の持ち主だと思う。どう考えても元々は兄のジョン(Dr)のツテでバンドに参加したような感じなのにまるでオーディションをパスして入ってきたようなプロフェッショナルな上手さだし何というか声に「癒し」の響きがあるのがポイントが高い。基本的にメロディーはPart1と同じなのだがアレンジにどこか米国っぽい響きがあるのは彼女のヴォーカルが北米の女性カントリーシンガーたちを彷彿とさせるからかもしれない。

いずれも「プログレ」というジャンルの枠内にとどまらない王道ロックといった風情の曲である。もうちょっとメジャーに売れてもよさそうなものだ。アルバム単位でCDが売れていた90年代にリリースされていたら状況はまた違ってたんだろうか。いずれにしてもチャートに影響力を持つNMEが取り上げそうもないバンドだからどのみち難しかったかもしれない。つくづくジャンルとかカテゴライズというのは邪魔な存在だな。ひょっとしてバンド名がいかんのだろうか。何といっても「呪い」という意味だしな。当初のドゥームメタル時代はともかく現在の音楽性には全く合ってない名前である。まあもうこの名前で20年以上も活動してるから変えるのも今さらだろうけど。