sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「Colour by Numbers」Culture Club(1983)

今から考えるとカルチャー・クラブというのは一体何だったんだろう。いい曲は多いのだがボーイ・ジョージドラえもん体型と奇妙奇天烈なファッションのために半ばコミックバンド的な扱いをされていたように思われる。元々顔も体もでかかったのだが一時期は「大仏か?」とツッコむレベルで肉が付きまくっていたものである。今は今で随分スリムになったもののヒゲにバリバリメイクの怪しいオッサンだ。まあそれでも当時ライバルと言われていたデッド・オア・アライブピート・バーンズよりは全然マシで、ピートなどは整形をし過ぎて晩年はすっかり変なオカマさんになってしまっていた。元の顔のつくりはピート>>>>ボーイ・ジョージだったのに実にもったいない。2人とも鼻にコンプレックスがあったのだがやはり安易に整形はするべきではなく、ボーイ・ジョージのようにできるだけ化粧でカモフラージュするほうが後のことを考えても賢い。基本的にボーイ・ジョージのメイクは「美しく見せるメイク」というより「欠点をカモフラージュするメイク」である。およそボーイ・ジョージほど欠点だらけの顔の持ち主はいないのではないだろうか。彼のようなでかい顔・でかい鼻・小さい目というのは女性だったらコンプレックスになりそうだ。従って鼻のでかさを目立たせないように目の周りに派手な色を置きまくったメイク、写真を取られる時は出来るだけ小顔に見せるよう常にあごを引き気味にするくせなどたくさんの努力をしている。しかしそのカモフラージュメイクは奇抜すぎて一般人には全く参考にならないのである。メイクというよりもはやコスプレだ。しかしこういう漫画的なキャラクターは日本人にはわかりやすく、普段洋楽をそんなに聴かない中学生たちの間でもボーイ・ジョージは割と知られていた。先述のピート・バーンズだけでなくデュラン・デュランとも随分インタビューで口撃合戦していたのでカルチャー・クラブvsデュラン・デュランという対立構造が日本の一地方の中学校でも浸透していて私のクラスでもそれぞれのファンが対立していたものだ。ちなみにこのボーイ・ジョージのインタビューというのがまたとても饒舌で一つの質問につき延々としゃべりまくるものだから当時のミュージック・ライフなどでは見開き2ページに質問3つしか載せられたかったものである。
かようにボーイ・ジョージという人は頭の回転の速いイメージがあるのだが、その割にしょっちゅう逮捕されていた記憶がある。2008年に男性を監禁した疑いで逮捕されたが、その数年前にもドラッグ使用で逮捕されたことがあった。それまでボーイ・ジョージはインタビューでも偉そうなことをたくさん語っていたからドラッグをやっていたというのは個人的にかなり衝撃的だったのだが、その時のボーイ・ジョージの言い訳が何と「僕は強い人間だからドラッグなんて止めようと思えばすぐ止められる自信があった」というものだった。止められなかったから逮捕されたんだろ、と言いたい人も多いと思うが、それだけ彼は自分の能力を過信していたのだろう。事実ドラッグ事件後「ジーザズ・ラブズ・ユー」名義で当時最先端のクラブ・ミュージックを取り入れた作品をいくつかヒットさせているし元々の音楽トレンドに対する嗅覚は鋭いのだろう。このようにボーイ・ジョージは天才肌といえば聞こえはいいが要は感情の起伏が激しくムラ気の多い人で傑作も多いのだが同じぐらい駄曲も多い。さらに曲はいいのにPVがダメというのもある。特に日本をバカにしてるとしか思えない「ミス・ミー(Miss Me Blind)」なんて曲はカッコいいのに実にもったいない。ちなみにこのPVに出演している芸者女は今はなき「音楽専科」誌のロンドン特派員記者だった黒沢美津子。日本人なんだからさーちょっとは文句言おうよ。

Colour By Numbers

Colour By Numbers

  • アーティスト:Culture Club
  • 発売日: 2003/10/07
  • メディア: CD
 

「Colour by Numbers」はその「Miss Me Blind」が収録されている彼らの2ndアルバムである。アルバムの半分がシングルカットされており彼らの中で最も売れたアルバムであるが一般的に一番知名度の高いシングルは 「Karma Chameleon」だろう。何しろ米英チャート1位その他の国でも殆どがチャート1位またはそれ以外でもTop5に入っていた大ヒット曲である。とりわけ日本ではこの曲の「カーマ、カマカマ~」というフレーズがボーイ・ジョージのおカマキャラと重なって大人気で、今ではすっかり「カルチャー・クラブといえばカーマ・カメレオン」みたいなイメージが出来上がってしまっている。常日頃から「カーマ・カメレオンだけがカルチャー・クラブじゃないしラスト・クリスマスだけがワムじゃないしアフリカだけがTOTOじゃないしセパレート・ウェイズだけがジャーニーじゃないぞ」と思っている私としては実に由々しき現状だ。ルックスやゴシップ的な話題の多かったボーイ・ジョージであるが、彼のややハスキーで甘く暖かみあるソウルフルなボーカルは今聴いても素晴らしい。とりわけアルバム最後の壮大なバラード「Victims」の美しさは感涙ものである。ラテン、ファンク、モータウン等様々な要素を貪欲に取り入れつつもタイムレスで普遍的なポップアルバムに昇華させた本作からは「人種とか性別とかジャンルなんて関係ない」という強力なメッセージが伝わってくる。「カーマ~」で彼らを知った若い世代の音楽ファンにもぜひこのアルバムは通して聴いてもらいたい。