sleepflower音盤雑記

洋楽CDについてきわめて主観的に語るブログ。

「War」U2(1983)

中学時代の一時期にU2に入れ込んでいたことがあった。多分当時の彼らの、荒涼とした曇り空に向かって熱く叫ぶような音風景が当時の私の中二病ど真ん中のメンタリティーにマッチしていたんだと思う。当時、よく聴いていた米軍放送FEN(現在のAFN)で頻繁にかかっていたのも大きかった。当時デュラン・デュランカルチャー・クラブ等華やかなルックスのバンドが多かった中、U2の無骨で硬派なところに新鮮な魅力を感じたものである。アイルランド出身というところにも物珍しさを感じていた。確かにシン・リジィやエンヤなどアイルランド出身のビッグネームはいるけれども、今でもアイルランド出身で日本で知られているレベルのバンドは英国出身のバンドに比べてそんなにいないんじゃないかと思う。初期のU2を特徴づける、冷気を帯びた鋭利な刃物のようなジ・エッジのギターの音はまさにアイルランドの荒野を思い起こさせるものであった。そのエッジの硬度の高いギターにどこか青臭くもエモーショナルで熱血一直線のボノのヴォーカルのコントラストはドラマチックで、当時の私のような中二病真っ盛りの洋楽ヲタを熱狂させるに充分であった。

War

War

 

 「War」は初期U2を代表する3rdアルバムである。まずジャケットが最強にカッコいい。およそ世の中の一切の不正や欺瞞を許さないといった風情の鋭い眼差しを持った少年の写真である。「Sunday Bloody Sunday」「New Year's Day」「Two Hearts Beat As One」等ヒットシングルも多いがその他の収録曲も軒並みレベルが高い。1st「Boy」や2nd「October」ではどちらかというとモノトーンな印象の、シンプルでストレートな曲が多かったのだが、この「War」では女性コーラスを取り入れたりよりバリエーションに富んだ作品となっている。しかし聴く者に妙な緊張感を強いる生真面目さがアルバム全体を覆っているのも事実で、上の世代からは「青臭い」と映るであろう真摯さ・潔癖さ・ナイーブさが当時の中二病全開だった私には非常に共感を覚えるものだった。実は私が夢中になってU2を聴いていたのはこの「War」までで、次の「The Unforgettable Fire」を聴いたときに「何か違う」という違和感を覚えたものである。ブライアン・イーノやダニエル・ラノワ等大御所をプロデューサーに迎えた意欲作だが、妙にアメリカ市場を意識したような音作りがピンと来なかったんだと思う。その後にロック史に残る名盤と言われる「The Joshua Tree」が来るのであるが、恐らく当時の私にはこの時期のブルージーな作品群を楽しむにはまだ充分耳が育ってなかったんだろう。それでも「Rattle and Hum」までは頑張ってついていったんだが、その次の「Achtung Baby」でついに心が折れてしまった。「Rattle~」での泥臭い米国ルーツミュージックから180度方向転換した当世風デジロックに「何考えとるんじゃワレ」と思ったものである。デジロックが嫌いなわけではないが既に当時ビッグネームであったU2がこの手の流行りの音楽をやるとダサさ倍増である。しかしこの路線は本人たちもお気に入りだったようで「Discotheque」のPVではミラーボールの下で4人一列に並んでアホなダンスを嬉々として踊る姿に頭を抱えたくなったものである。最近はまた昔のギター中心のロックに回帰しているようだけれどあの「Achtung Baby」「Zooropa」「Pop」のデジタル三部作はいったい何だったんだろう。しかしこれらの作品からU2のファンになったという人も結構多いから多分私の感性のほうがイケてないんだろう。前々から気になっていたんだがU2を1stから最新作まで一貫して好きというファンはどれぐらいいるんだろうか。単にボノのファンで「どんな曲でもボノが歌えば超オッケー」みたいな人たちなのかもしれないけど。